今の競馬マスコミに欠けているのは、レース観戦記である。目の前で起こったことに対して、何を感じて、どう解釈するのか。その振り返りを文字にして残しておかなければ、記憶はやがて美化されながら薄れていく。後世の人間が記録を辿っても、実像が出てこない。そうならないように、未来予測と同等の熱量で、レース観戦記という現在体験を、忖度なしに書き留めておく必要がある。
(月刊誌、競馬の天才!2025年1月号Vol.75、「田端到の爆走(お馬)ファンタジー 馬は眠るがキャラバンは進む」より)
ただの一競馬ファンだが、そういう目線もありだろうと、記す。
レース前状況
フルゲート16頭に対して、登録馬24頭。
抽選対象で、同週の牝馬限定フェアリーステークスにも登録していた五頭の内、有力とされていたアルテミスステークス4着のシホリーンがいたが、同じくアルテミスステークス5着のマイエレメントは、シンザン記念だけの登録。
しかし、シホリーンと同じく、マイエレメントも除外。福永厩舎だけに期待している人も多かった印象。3月のチューリップ賞へ回るとのこと。
レース前の人気としては、朝日杯フューチュリティーステークスを1人気で5着と敗れたアルテヴェローチェが最有力。サウジアラビアロイヤルカップで同馬に僅差で敗れたマイネルチケット、タイセイカレントなどが続く形。
枠確定前にポッドドンナーが出走取り消しとなり、15頭立てとなった。
予想
朝日杯をドンズバ(1着〇2着◎)で当てている身としては、アルテヴェローチェ(朝日杯では▲だった)の取り扱いに悩んだ。
理由は一つ、馬場状態。細かく分ければ二つ、京都の超高クッション値と、中京の低クッション値。
朝日杯の舞台となった当日は、クッション値が11以上という、JRAがクッション値を発表してからも滅多に見られない超高クッション値が、改装後の京都では続いていた。
この馬場は、特殊も特殊で、このクッション値だけ激走する馬がいる一方、このクッション値を経験してない馬は中々勝てない。そこら辺の状況は、競馬本著者としてYoutubeでも活動されている竹内裕也氏(YotuubeCH https://www.youtube.com/@TAKETUBE/videos)が指摘していた。
アルテヴェローチェは、このクッション値経験がなく、負けてきた格好。ならば、一転、シンザン記念当日の中京のクッション値は9.2と低い値ゆえに、洋芝の札幌新馬、稍重の東京サウジアラビアロイヤルカップと勝ってきてるため、巻き返しは可能かと思う。
しかし、その中京の馬場が想像以上に荒れていて、内側は芝が剥がれているのか、補修のための砂がより多く撒かれたのか、もうダートかと見間違うレベルの色。ならば、内側不利なのかと思えば、先行した内が粘り切るレースが多く、二桁番手からは3着まで差し込めればいい方みたいな状態で、判断しづらい。頭が混乱していた。
アルテヴェローチェは、ぼやっとしてるとまた二桁番手になりそうで、それが疑念となっていた。
パワー寄りの持続勝負となれば、前の馬で粘り切れる馬を探した方がいいのでは?という考えから、中京マイルを先行して買った経験のある穴馬から入る。
毎週メインレースは競馬仲間の友人達とLINEで、予想と買い目を披露しあってる。
観戦記
ゲートが開くと、スプリントの小倉2歳ステークスを勝って来たアーリントンロウが先頭へ、それをやり過ごしてタイセイカレントが二番手。そこに行き脚のついたラージギャラリーが上がってきてハナをたたく。アーリントンロウが下がっていくが、タイセイカレントは番手を維持。
サウジアラビアロイヤルカップもしくは朝日杯組で、タイセイカレントだけを馬券で拾ったのは、この枠と武豊ならそういうことになるだろうという目論見だったが、やはりそうなった。これは勝ちポジなんじゃないか?とすら思った。
あとは、このまま決まってくれれば……と、アルテヴェローチェやマイネルチケットを探すと、全体のど真ん中あたりで両馬並走。これはあるような、ないようなと見てるところ、その外をレーヴブリリアントが追い抜かしていく。
カメラが切り替わって、コーナーを回り始めた先頭を映すと、レーヴブリリアントがなんと先頭に。え!?いつの間に!?
直線に入って、ラージギャラリーに少し遅れた並走気味のレーヴブリリアントが、追いすがろうともがいているが、脚色はよくない。ラージギャラリーのすぐ後ろのタイセイカレントは、二頭と埒の間に作られたポケットに入り込んでしまっているが、脚はあるように見えた。
これは、どう出すのか出せるのかと思った瞬間、タイセイカレントがぐいっと首を入れて、レーヴブリリアントを弾く。一杯一杯だったためか、レーヴブリリアントは大きく寄れて、後続馬と軽い接触。これはちょっと強引だったが、その時は、脚を無くしてるわりに締めすぎのレーヴブリリアントのほうが悪いという感じを受けた。
ラージギャラリーを抜いていく、タイセイカレントを見て、いや、じゃぁ、もうこうれでいい!複勝とワイドでいい!と思ったが、タイセイカレントがハマっている間に、進路オールクリアのアルテヴェローチェが外から伸びてきた。ラージギャラリーは沈んでいき、個人的には、ここで終戦。
アルテヴェローチェが先頭に躍り出るも、それは一瞬だけで、すぐ内から同じように伸びてきたリラエンブレムの末脚の方が勝り、伸びきって優勝。アルテヴェローチェは力を出しきって負けた二着。
三着は、ほぼ最後方から追い込んできた14人気ウォーターガーベラでは、予想も馬券も、お手上げ状態。ハナ差4着マイネルチケット、そこから1馬身と1/4の5着タイセイカレントは、伸び負けた形。
本命にしたラージギャラリーは頑張ったが8着、先行することを期待した対抗オンザムーブは二桁番手から9着。単穴だったメイショウツヨキは、先行したが、勝ち馬から3.5秒も離され、同じく先行したアーリントウロウと仲良く14,15着。
素直にアルテヴェローチェ本命でも良かったかぁと反省。
回顧
このレースでは、騎乗停止9日間(開催4日)の裁決が出た武豊の騎乗が第一にあがるだろうか。
そういう位置取りと競馬になるだろうなと予想していた身としては、騎乗事態は問題ないと考える。大マクリを打ったレーヴブリリアントは、道中位置を取れなく、このまま直線まで待っていれば、頭はないと考えての行動だったのか、しかし、この騎乗も同じく問題ないと思う。
じゃぁ、直線が問題で、結果として締めすぎた(脚色ぎりぎりで、譲る余裕もない)松山が悪いのか、強引だった武豊が悪いのか、これは若干武豊が悪いとするほうが、理はあると思う。世間では武豊が、かなり悪いという風潮だが、騎手がやったというよりは、脚は残っていたので馬の方が自主的に首を入れた感じもあり、松山も頑張りすぎた感がある。武豊が百悪いというよりは、松山にも五ぐらいはありそうだと思うが、それより「騎乗停止開催4日間は重すぎる」というのが、注目するポイントじゃないかなぁと考えている。
武豊自身、自分のブログで、反省の弁を述べると同時に、4日間の処分には驚いている旨を載せている。個人的には重くて過怠金だろうとは思っていた。騎乗停止という一報を見て、2日間かな?とも思った。それが4日間!
そうなってくると、ちょっと勘ぐってしまう。つい最近、去年の不祥事連発があり、JRAは監督省庁から厳しくするように指導が入ったようだという報があった。そうなると、JRAとしては口約束で終われず、そういう行動を見せなくてはならない。
そこに来て、重賞レースで、騎手界の第一人者の裁決が持ち込まれる。一罰百戒とするには絶好のタイミング。本来なら騎乗2日が、監督省庁へのアピールで、さらに上乗せドン!私たち、厳しくやってますよ!?なーんて妄想を、してしまう。
岩田Youtube騎乗停止など、そういうJRAの動きを見せられている騎手界としては、会長武豊自ら、JRAのお役所体質に唯々諾々と従わずに嫌味を一つ垂れておいて、お互いの立場の均衡を保った。なーんて妄想も、してしまう。
裁決程度が妥当だったのか、未だに個人的には、よくわからない。騎乗停止はしょうがないとしても。
まぁ、ここまでの部分は、競馬ファンとして居酒屋でクダを巻いて嘯くレベルの、質の悪い与太話になってしまうか。ただ、今後騎乗停止が、意外と内容重く処される流れにあるのかもしれない。綱紀粛正の時期なんだろう。
レースに話を戻せば、タイセイカレントはスムーズに抜け出せていれば、勝ったとは言わないまでも、先着された馬達との差はもっと小さかったように思う。
勝ったリラエンブレムは、予想以上に強い。前走京都10.6のクッション値、11には行かずとも、10台もかなり高いクッション値なんだよなぁ、今回の馬場では割引じゃないかな?と思ったが、そんなことはなかった。
アルテヴェローチェを物差しにすれば、それよりは確実に強い。NHKMC路線だとは思うが、ただ、そうなると若干足りないような気もする。しかし、以降の重賞戦線も馬券内として考えられるのは、このレースの出走馬・現時点では、リラエンブレムだけだろうと見る。